KEIJI WAKABAYASHI

・・・・逸話ヒストリー・・・・

かつて、伊勢丹新宿本店、千葉亀田総合病院の制服など、洋服カテゴリーのデザインをしました。
それは自然な型で、洋服仕事の延長でした。
用途に合わせて、ヒヤリングして、検証してデザインしていく。

飲食店制服の第一弾・フロリレージュさんは、素敵なコンセプトのお店に似合う、ベーシックなコックコートの制作でした。
制服感を強調する為に、店内全員のデザインを統一して、調理仕事毎に袖のデザインを変えました。
ソムリエさんは、シャツとエルメスのタイに合わせる為に、コックコートの襟元デザインそのままに、セットインスリーブにしました。
川手さん(川手寛康氏)からは、左袖にペンを刺したいとリクエストがありました。
その数ヶ月後に、「フロリレージュ+傳+アニス」の三店コラボをする為に、オーナー3名様の制服を作りました。
その際、川手さんより、
「傳さんは、藍染で。アニスさんは、白いコックコートでお願いします」
と、リクエストがありました。
それがきっかけになり、今でも傳さんでは様々な藍染の生地を使って、長谷川さんご本人様の制服を作っています。
長谷川さん(長谷川在佑氏)の制服は日本料理店でありながら、フレンチレストランのフロリレージュさんと同じ洋服のコックコートなのです。
これがPattern-02のボディになりました。

そして、その後に、寿司三谷さんの依頼を受けます。
初めての和食でしたので、打ち合わせ前に、着物のような制服を研究してミーティングにのぞみました。
三谷さんのリクエストは「握りが美しく見える制服」でした。
仮縫いスタートは着物パターンでしたが、進むにつれ、三谷さんの自然体で握れる所作ポーズを立体裁断で作ることになったのです。
仮縫いは、洋服側からのアプローチに変えました。
最終的なボディは、コックコートの肩傾斜の身頃のまま、前に寄ったアームホールに握り手の曲がった腕の型の袖をつけました。
そして、お店にふさわしくなるように、和服の前身頃のダブル前の重なりを残した上で、
「洋服に見えない、和食に見えて、同じ物が無い、特別な型にしてください」
とリクエストがあり、デザインを考えました。
この時は、三谷さん用に特別なデザインになりましたが。
新しい型紙の、洋服型に前身頃のみ着物の考え方にしたPattern-03が完成しました。

余談ですが、足袋のリクエストがあり、エプロンと同じ色で制作したのですが、その際びっくりしたのが、調理場の床が畳だったのです。
水を一切こぼせない、綺麗な所作が必要な調理場に、緊張感がありました。
畳以外の硬さでは握りが硬くなり、畳の上だからこそできる握りだとご説明いただきました。

そして制服の難しさと楽しさを感じてきた頃。
和食制服のパターンの考え方は既に完成していて、そこに触れてはいけないのでは?
と考えていた頃、静岡の天ぷら屋さん、成生さんの制服をつくる事になりました。
成生さんより、
「一つ注文があって。天ぷら屋なので、前が熱い分、後ろから冷気(クーラー)を当てているのだけれど、首が寒いので、襟を首に沿わせて風から守って欲しい」
とリクエストをいただきました。
着物パターンだと、襟は抜けてしまいます。
着物は襟が直線ですが、襟の後ろ中心をカーブにしたら、首に添います。

ここで改めて着物制服の良さを考えてみました。

①白い制服は、クリーニング回数が圧倒的に多い。
②着物型制服は、クリーニングあがりが平らな畳み納品で、ハンガー納品よりかなり安い(平らにアイロンをかけられる服の方が圧倒的に低コストなのです)。
③着物型は、前が重ねがあるので、ある意味フリーサイズ。

成生さんの制服依頼をきっかけに、着物パターンではない、新しい型紙に挑戦して、かつ、着物型の良さを取り入れようと考えました。
数十回、原型を作り、クリーニングの試しをいれて、平にプレスして仕上がる型に完成しました。
これがPattern-01で、和型に見えて、肩傾斜があるので、和のテイストなのに、襟元にノッチのカラー、ショールカラーをつける事ができます。

事の始まりは、この三型グラデーションの話を、東京ユニフォームさんにて熱く語ってしまい……。
認めて頂き、少数ながら展開してみよう!って話になったのです。

若林 ケイジ | ファッションデザイナー
1964年長野県生まれ。文化服装学院卒業後、株式会社ワイズ(現・株式会社ヨウジヤマモト)にて8年間に渡りニット、カットソーの企画チーフを担当。2000年、株式会社ナショナルスタンダードを設立し、2004年11月まで代表取締役を務める。以後はnational standardのプロデューサーに移行。他、ユニクロ企画・伊勢丹新宿本店 制服デザイン・千葉県亀田総合病院 制服デザイン・ジャニーズ衣装デザイン等を担当。